同組合設立同意書の調印
イ、西陣地域内織物業者数及同組合設立同意者数 同業組合準則第一条は、地区内同業者の四分の三の、同意を以て設立すると定めている。 西陣織物業組合でも地区は京都市全域とすべきは当然であった。当時京都市は上下二行政区になって居た。其内上京は四十一地区に分割せられ、之れを組と称した。
織物業者は、一組乃至九組、十五、十六、十八、十九組内に密集し、十三、十四、十七、組内にも若干存在した。道路筋を以て見れば、大略、南は出水通、東は室町通、西は御前通り、北は蘆山寺通が此年代の織屋部落であった。 明治十七年七月から、同十八年一月迄の右地域内織物業者数は、一、五九二戸が平均数であることは第一節第一項表の通りである。
右織物業者を社別にすると、紋織社、三二二戸。生紋社、一三八戸。博多社、一八六戸。羽二重社、一一〇戸。繻子社、二四九戸。縮緬社、一九三戸。天鵞絨社、七九戸。木綿社、三一七戸。となって居る。
右数は何れも賃業者を含んでいない、所謂、自前業者のみである。
準則組合設立には、右数の四分の三の同意を求めればよいのであるから、各社毎に肝煎が手分けして、同意調印を求めたとしても、其負担は極めて少数である。勿論各社所属織物業者が密集して居る場所もあるが、多くは西陣地域各組各町に撒在して居るのであるから、道のりはあっても、四分の三はおろか、全員数の同意調印を求める事も、さ程困難でなかったと思われる。
ロ、西陣織物同業組合から西陣織物業組合へ変転 本章第一節第四で、京都府布達甲第十九号により組合設立の為山田泰蔵外四名が、京都府に出頭し、西陣織物同業組合を設立した旨を述べた。 所が農商務省令準則組合は、京都府布達甲第十九号組合とは根本的に設立精神が異るのであるから、右布達組合を解消して、新たに準則組合を設立すべきであるが、京都府は、右甲第十九号布達の面子を固守して、「此準則に抵触スルモノハ来ル六月三十日限更正又ハ追加規約ヲ作り更ニ開申認可ヲ請フベシ」、と云うたので、実は新組合設立と同様の手続を要しても、認可申請は規則改正開申とせねばならなかった。
西陣織物業組合規約制定及認可 京都西陣織物業組合、規約御認可書之写、と題し一般組合員に配布した。
送 達
本年四月本部甲第五十号ヲ以テ同業組合準則御布達ノ旨趣ヲ遵守シ組合会議ノ決議ヲ以テ別冊ノ通規約改正開申候処御認可相成候条此段送達候也 明治十八年十月
西陣織物業組合
組 長 大 木 長 七 郎
議 長 植 田 利 七勧第四〇九号
書面之趣認可候事
明治十八年十月七日
京都府知事 北垣国道代理
京都府大書記官 尾越蕃輔
右送達書には組合会議の決議を以て、規約を改正して開申したとあるから、其会議は西陣織物同業組合の会議であらねばならない。其決議記録が保存せられて無いから判らぬが、明治十八年四月には西陣織物業組合役員が決定して居るので、右開申認可申請は同年四月中に京都府へ提出したものと思われる。さすれば京都府の右認可迄には六カ月を要して居る。之れは京都府と農商務省との間に於ける、法令上の指導打合せに要したものと想像して間違いない。其理由は、右四月決定の役員職名及其員数が変更せられ、旧各社を組としたものが改名して部と称し、其他にも変更せられた箇所が数々ある事から見て、主務官省の指示を待った為認可が遅延したものであろう。
西陣織物業組合規約 西陣織物同業組合規約を発見せないので、此組合規約が如何に改正したのか不明であるが、同業組合の「同」の字を削除したのは明白である。全文は六十五カ条と附則であって、之れを九章に分類し、一章毎に第一条から始まる珍らしい形式のものである。又各法文には漢字に意訳振仮名を付け、部所属織物品種を決定してある。次に規約全文を掲げ、初めの条文のみ右振仮名を付して参考に供する。体裁上認可書も再記する。
規約御認可書之写
送 達
本年四月本部甲第五十号ヲ以テ同業組合準則御布達ノ旨趣ヲ遵守シ組合会議ノ決議ヲ以テ別冊ノ通規約改正開申候処御認可相成候条此段送達候也
明治十八年十月
西陣織物業組合
組 長 大 木 長 七 郎
議 長 植 田 利 七 印勧第四〇九号
書面之趣認可候也 印割
明治十八年十月七日
京都府知事 北垣国道代理
京都府大書記官 尾越蕃輔 印
第一章 組織名称
第一条 当組合(このくみあい)ハ、西陣織物業組合(おりものをこしらえるひと)ト称シ織物製造業者(おりものをこしらえるひと)ヲ以テ組織(くみたて)シ同職工(おなじおりて)ヲ其附属(そのつきしたが)イトス
第二条 当組合(このくみあい)ヲ大別(おおわけ)シテ八部(はちぶ)トス其名称(そのとなえ)及各部(かくぶ)ニ於テ製造(こしらえいだ)スル織物(おりもの)ヲ左ニ概記(あらまししる)ス
八部名称及製品
紋織部製品
糸錦織(いとにしきおり)、緞子織(どんす)、遠州緞子織(えんしうどんす)、繻珍織(しゆちんおり)、厚板織(あついた) 大和錦織(やまとにしき)、雲繝織(うんけん)、漢唐緞子(かんとうどんす)、綾地織(あやぢ)、縷糸織(よりいと) 郡中織(ぐんちゅう)、風津織(ふうつ)、高麗縁織(こうらいべり)、錦織(にしきおり)、古金欄織(こきんらん) 広金織(ひろきん)、半金織(はんきん)、無地金織、地金織(ぢきん)、小石織、絽金織、小巴織(しょうは)、匹田織(ひった)
生紋部製品
綾織(あや)、顕紋紗織(けんもんしゃ)、紋綾織、唐綾織(からあや)、広綾織、固地綾織(かたぢあや)、絽織、紋絽織、紗織、紋紗織、紗綾織(さや)、絽金織(ろきん)、精好織(せいご)、紋白織(もんしろ)、綸子織(りんず)、絖織(ぬめ)、紋壁織(もんかべ)、縫紗織(ぬいしゃ)、紗金織(しゃきん)、薄板織(うすいた)
羽二重部製品
羽二重織、壁羽二重織、塩瀬織(しおせ)、壁塩瀬織、画絹織、平絹織、練織(ねり)、縬練織(しじら)、飾絹織(ふるいきぬ)、生絹織(すずし)、保多織(ほた)、綟子織(もぢ)、亀綾織(かめあや)、撰糸織(せんじ)、経織(へ)、絓織(しけ)、ハンカチーフ織
繻子部製品
黒繻子織、紋繻子織、色繻子織、縞繻子織、生緯(きぬき)繻子織(きぬき)、 綿緯黒繻子織、綿緯色繻子織、綿緯縞繻子織、南京(なんきん)繻子織
縮緬部製品
本逼織(ほんせば)、綿逼織、縞縮緬織(しまちりめん)、数寄屋織(すきや)、明石縮織、上布織、壁上布織、絹縮織、生縮緬織、平御召織、綿壁上布織
博多部製品
博多織、紋博多織、琥珀織(こはく)、茶鵜織(ちゃう)、一楽織(いちらく)、 八丹織、斜子織(ななこ)、高貴織(こうき)、呉絽織(ごろ)、小柳織、海気織(かいき)、綿博多織
天鵞絨部製品
黒天鵞絨織、色天鵞絨織、黒輪(くろわな)天鵞絨織、色輪(いろわな)天鵞絨、縞天鵞絨織、紋天鵞絨、底金(そこきん)天鵞絨織、色飛(いろかすり)白天鵞絨織、二重天鵞絨織、黒綿緯(くろめんぬき)天鵞絨織、色綿緯天鵞絨織、綿天鵞絨織、金華山織、長毛(ながけ)天鵞絨織、金版(きんばん)天鵞絨織、吉野天鵞絨織、綛(かせ)天鵞絨織
木綿部製品
小倉織(こくら)、小倉帯地織、小倉袴地織、真田織(さなだ)、今春織(こんぱ) 綿当麻織(めんたえま)、洋服紺地織、洋服白地織、綿縮織(めんち)、綿繻子織、小倉紋帯地織、肩懸地織、衿巻地織
第二章 地区事務所
第一条 当組合ハ上下京区内ヲ以テ其地区トス
第二条 各部(かくぶ)内ノ戸数(やかず)ニ応ジ地ヲ図(かぎり)シテ区(さかい)ヲ定メ事務(つとめむき)ノ便宜(たより)ヲ図ル可シ
但本文ノ地図(さかい)ヲ定ムルノ順序(てつづき)ハ別ニ之ヲ示ス
第三条 当組合ノ事務所ハ上京区第八組橘町第七番戸内壱号ニ設置ス
第三章 目的及方法
第一条 当組合ハ共同(こころをあわ)シテ本業(おりもの)ヲ盛昌(さかん)ニシ物産ヲ拡張(おしひろめ)スルヿ以テ目的(めあて)トス
第二条 組合事務所ヨリ証紙ヲ発行シ組合員ニ於テ製造スル物品(しなもの)ニ貼附(はりつけ)セシメ本組合員ノ製品(このくみあいのひとこしらえたしな)タルヿヲ証明(あかしおく)ス
但其雛形及施行順序ハ追テ之ヲ定ム
第三条 組合員ニ於テ製品スル物品(しなもの)ハ精巧(くわしきたくみ)ヲ旨(おも)トシ物産(しなもの)ノ名誉(ほまれ)ヲ毀損(そこなわ)セサルヿニ注意ス可シ其売価ノ如キ濫リニ低価(やすね)ヲ競フ等売買上不当ノ事ヲナス可カラズ
第四条 組合員製品ヲ仲買商人ニ売渡シ仲買人ヨリ歩引或ハ値引等不当ノ支払ヲ受ケタルトキハ必事務所へ申出可シ然ルトキ組長ハ之レヲ役員会ニ諮リ相当ノ取扱ヲナス可シ
但殊更ニ約定アル者ハ此限ニアラス
第五条 取引上仲買商ヨリ不当ノ取計ヒヲ受ケタル者ハ其旨事務所へ申出可シ此場合ニ於テハ組長ハ能其実際ヲ査覈シ役員会決議ノ上其旨組合員一同へ告知ス可シ
附タリ組合員本文組長ノ告知ヲ領知シタルトキハ其仲買商ト爾来断然取引ヲ為ス可カラズ
第六条 組合員有益ノ織物又ハ織法等ヲ発明スルトキハ役員会ノ決議ヲ以テ其功労報酬トシテ若干金ヲ賞与ス可シ
但此場合ニ於テハ特別証紙ヲ附与シ該品ニ貼附セシメ其発明ヲ証ス
第七条 組合員ハ毎月ノ製造品及売捌品ノ数量代価等ヲ計算シ翌月二日迄ニ幹事へ差出シ幹事之レヲ三日中ニ部長へ差出シ部長之レヲ精算シテ四日中ニ組長へ差出ス可シ
第八条 組合員ハ常ニ左ノ件々ニ注意考察シ其方法ヲ為ス可シ
一、手術ヲ練磨シ製法ヲ工夫シ良品ノ製造新法ノ発明ヲ図ルヿ
二、世上需用供給ノ釣合ヲ観察シ物品ヲ製造シ粗製濫造ヲナササルヿ
三、原品産業ノ景況職工ノ能否其他消費ノ得失ヲ考へ製造費ノ減省ヲ図ルヿ
四、時勢ノ変遷産業ノ興廃流行ノ適否ニ注意シ販路ノ拡張ヲ図ルヿ
五、営業上利害ニ関スルヿアルヲ認ムルトキハ何事ニ拘ハラス組長へ報告スルヿ
第九条 当組合ハ毎月一回事務所ニ於テ談話会ヲ開き当業ノ景況利害得失ヨリ矯弊図益ノ見込等ヲ談話スヘシ
第十条 修業弟子及職工取締教育規約ハ追テ之レヲ定ム可シ
第四章 役員職制
第一条 当組合ハ左ノ役員ヲ置ク
組長 壱名
副組長 壱名
取締 三名
理事 無定員
書記 無定員
第二条 各部ニ於テ左ノ役員ヲ置ク
部長 壱名
副部長 壱名
幹事 無定員
第三条 組長ハ組合ニ係ル一切ノ事務ヲ総理ス其大要左ノ如シ
一 組合員ノ名簿ヲ整理スルヿ
二 組合員ノ組合ニ関スル願届書ニ調印スルヿ
三 商工景況及統計書ヲ調製スルヿ
四 組合会ノ決議事件ヲ施行スルヿ
五 官庁及区役所等ノ諮問ニ答申シ及照会ニ応答スルヿ
六 組合員ノ組合ニ関スル紛議ヲ和解スルヿ
七 違約者処分ヲ施行スルヿ
八 金品ノ出納ヲ整理スルヿ
九 役員選挙ノ投票ヲ開査スルヿ
十 諸役員ヲ監督スルヿ
十一 理事以下ヲ進退スルヿ
十二 当業改良ノ方法ヲ計画シ及利害ニ関スル事件ハ速ニ組内へ通告スルヿ
十三 組合ニ関スル官令ニ対シ疑義アリト認ムルモノハ組合人ニ其心得方又ハ取扱方ヲ指示スヿ
十四 証紙発行ノヿ
十五 職工取締ノヿ
以上ノ事項中重要ノモノハ役員会ニ諮リ然ル後施行ス可シ
第四章 役員職制
第一条 当組合ハ左ノ役員ヲ置ク
組長 壱名
副組長 壱名
取締 三名
理事 無定員
書記 無定員
第二条 各部ニ於テ左ノ役員ヲ置ク
部長 壱名
副部長 壱名
幹事 無定員
第三条 組長ハ組合ニ係ル一切ノ事務ヲ総理ス其大要左ノ如シ
一 組合員ノ名簿ヲ整理スルヿ
二 組合員ノ組合ニ関スル願届書ニ調印スルヿ
三 商工景況及統計書ヲ調製スルヿ
四 組合会ノ決議事件ヲ施行スルヿ
五 官庁及区役所等ノ諮問ニ答申シ及照会ニ応答スルヿ
六 組合員ノ組合ニ関スル紛議ヲ和解スルヿ
七 違約者処分ヲ施行スルヿ
八 金品ノ出納ヲ整理スルヿ
九 役員選挙ノ投票ヲ開査スルヿ
十 諸役員ヲ監督スルヿ
十一 理事以下ヲ進退スルヿ
十二 当業改良ノ方法ヲ計画シ及利害ニ関スル事件ハ速ニ組内へ通告スルヿ
十三 組合ニ関スル官令ニ対シ疑義アリト認ムルモノハ組合人ニ其心得方又ハ取扱方ヲ指示スヿ
十四 証紙発行ノヿ
十五 職工取締ノヿ
以上ノ事項中重要ノモノハ役員会ニ諮リ然ル後施行ス可シ
第四条 副組長ハ其職権組長ニ亜ク常ニ組長ヲ助ケ組長不在又ハ事故アル節之レヲ代理ス
第五条 取締ハ正副組長ニ従ヒ庶務ヲ掌理ス
但正副組長不在又ハ事故アルトキハ取締ニ於テ代理スルヿアル可シ
第六条 理事ハ正副組長取締ノ命ヲ領シ諸務ニ従事ス
第七条 書記ハ諸帳簿記録受附等ノ事ヲ掌トル事務ノ都合ニ依リテハ理事ヲ兼ムコト有ル可シ
第八条 部長ハ正副組長ノ意ヲ受ケ其部内ノ事務ヲ幹理ス其大要左ノ如シ
一 部内組合員ノ名簿ヲ整理スルヿ
二 組合員ノ組合ニ関スル願届書ニ認印押捺スルヿ
三 組合ニ関スル官令及組長ヨリ通達ノ事件ヲ伝達又ハ施行スルヿ
四 組合員ヨリ組長へ差出ス諸報告書ヲ取纏ムヿ
第九条 副部長ハ掌トル処部長ニ同シ
第十条 幹事ハ其管理区内ノ諸文書ヲ送達シ庶務ヲ斡旋ス
第十一条 正副組長取締正副部長幹事ハ俸給ヲ附セス組合会ノ決議ヲ以テ若干ノ慰労金ヲ呈ス可シ
第十二条 役員(理事以下ヲ除ク)ハ組合員ニシテ地区内ニ住居シ年齢満二十一歳以上ノ男子ニ限ル可シ
但左ノ各項ニ触ルヽ者ハ役員タルヲ得ス
一 風癲白痴ノ者
二 禁錮以上ノ刑又ハ賭博犯ニ処セラレ満刑後三ヶ年ヲ経サル者
三 身代限ノ処分ヲ受ケ負債ノ弁償ヲ終へサル者
四 当業ニ関スル官令又ハ組合規約ニ違ヒ処分ヲ受ケタルヨリ一ヶ年ヲ経サル者
第十三条 役員ハ左ノ方法ヲ以テ選挙ス
一 正副組長取締役ハ組合会ニ於テ選挙ス可シ
二 正副部長ハ部内幹事ノ投票ヲ以テ選挙ス可シ
三 幹事ハ其管理区内ノ組合員ニ於テ選挙ス
但選挙ハ投票多数ヲ以テ当選トシ同数ナルキハ年長ヲ採リ同年ナルトキハ鬮ヲ以テ之レヲ定ム可シ最高当選者辞退スルトキハ次点者ヲ以テ之レニ充ツ
第十四条 役員ノ任期ハ満二ヶ年トシ初メ一ヶ年抽籤ヲ以テ其半数ヲ改選シ爾後一年毎ニ半数ヲ改選ス可シ
但改選ノ節前任者ヲ再選スルヲ得
第五章 会議規程
第一条 会議ヲ分ツテ総会組合会役員会及部会ノ四種トス
第二条 総会ハ組合一統ノ総集会ニシテ毎年四月一回之レヲ開設シ組長之レカ会頭トナリ前年中組合事業ノ要領ヲ報告シ組合員ノ懇親ヲ結ヒ且当業上大事件アルトキハ之レヲ議ス
但組合会ニ於テ臨時総会ヲ必要トスルトキハ臨時時会ヲ開クヿアル可シ
第三条 組合会ハ組合人代議員ノ集会ニシテ定期臨時ノ両会ニ分チ定期会ハ毎年三月ニ開キ臨時会ハ臨時要用アルトキ開クモノトス
但役員会ニ於テ至急要用ト認ムル事件アルカ又ハ議員三分ノ一以上ノ同意者ヲ以テ請求スルニアラサレハ臨時会ヲ開クヲ得ス
第四条 役員会ハ役員集会シテ時々便宜ニ開会シ組合ニ係ル要務ヲ談議スルモノトス
第五条 部会ハ各部内限リ其部内幹事ヲ以テ之レヲ開キ部長之レカ会頭トナル可シ
但部会ノ決議ハ組長ノ認可ヲ得テ施行スルモノトス
第六条 組合会ニ於テ議定スヘキ事件ハ左ノ如シ
一 組合員ノ営業取引ヲ確実ニシ弊害ヲ矯正シ公益ヲ図ル方法
二 粗製濫造ノ弊ナカラシムル方法
三 本業ノ改良進歩ヲ計画スル方法
四 修業弟子並ニ職工取締及教育方法
五 組合経費ノ収支予算及賦課方法
六 経費出納ノ当否
七 官庁諮問ノ重要事件
八 規約細則等ノ制定改正増減
九 役員会ニ於テ要用トスル事件
第七条 議員定数ハ各部戸数ニ応シ三名以上七名ヲ選出セシム被選挙人ノ資格ハ第四章第十二条ニ同シ
但正副組長取締ヲ除クノ外役員ヲ以テ議員ヲ兼ヌルヿモ妨ケナシ
第八条 議員ノ任期ハ満二ヶ年トシ一年毎ニ其半数ヲ改選ス尤当初ノ退任者ハ鬮ヲ以テ定ムヘシ
但改選ノ節ハ前任者ヲ再選スルモ妨ケナシ
第九条 組合会ハ議員中ニ於テ議長副議長ヲ選挙シ議長事故アルトキハ副議長之レニ代リ議長副議長トモ事故アルカ又ハ欠席スルトキハ更ニ議員中ニ於テ仮議長ヲ選挙シ之レヲ開ク者トス
第十条 議案ハ役員会ニテ調製シ組長之ヲ発スヘシ
但組長ハ役員中ニ委員ヲ定メ該案ニ対シ説明ヲ任スルヲ得ヘシ
第十一条 会議ヲ開カントスルトキハ左ノ方法ニ従フヘシ
一 会議ハ議員過半数ノ出席ナケレハ開ク事ヲ得ス若議員止ヲ得サル事故アリテ出席シ難キトキハ其部内組合員中ヨリ議員トナル可キ資格ヲ有スル者ヲ代理人トシ自分ノ欠席書ヲ差出スヘシ
但代理人ハ部長ノ添書ヲ要ス
二 議事ハ出席過半数ノ同意ヲ以テ決ス可否同数ナルトキハ議長ノ決スル処ニ従フヘシ
三 決議ノ事項ハ之ヲ要録シ組長議長連署シ区長ヲ経由シ本府庁へ上申スヘシ
第六章 加入者及退去者規程
第一条 新タニ織物業ヲ開キ本組合ニ加盟セントスルトキハ開業願書ト共ニ加入申込書ヲ作リ其部長及幹事ノ調印ヲ受ケ組長へ差出し且開業願書ニ調印ヲ受クヘシ組長ハ先ツ本規約ヲ承知セシメ其紙末ニ確守ノ旨ヲ記シ記名調印セシメ然ル後願書ニ調印スルモノトス
第二条 当組合ハ左ノ如キ標札ヲ製シ商業人へハ記号ノ肩ニ甲ト烙印シ工業人へハ記号ノ肩ニ乙ト烙印シ戸外ノ見易キ所ニ掲ケシムヘシ
但組合員ハ標札手数料トシテ金五銭ヲ差出スヘシ
(標札図型) 縦曲八寸五分 横曲四寸
京都府認可
西陣織物業組合員 印
甲又ハ(乙) 住所
第何号 何条某
第三条 組合員代換改名転居廃業等ヲ為ストキハ其都度幹事ノ認印押捺ヲ以テ部長ヲ経由シ届書ニ組長ノ調印ヲ乞フヘシ
但廃業ノ節ハ証標ヲ返戻シ其他ノ書換ヲ乞フヘシ
第四条 組合員ハ明治十八年四月本府甲第五十号布達同業組合準則第四条但書ニ依リ本府ノ認定ヲ受ケシ者ノ外ハ何等ノ事情アルモ当組合ヲ退去スルヲ得ス
第五条 当組合地区内ニ於テ当業ノ職工タラント欲スル者ハ幹事部長ヲ経テ組長へ申出職工証標ノ下渡ヲ乞フヘシ組長ハ本規約中職工ニ係ル部分ヲ承知セシメタ左ノ如キ証標ヲ渡スヘシ
但証標手数料トシテ金五銭ヲ差出スヘシ
(証標図型) 表面 曲二寸五分
何第何号 何々織職工
住所 何条某
裏面 曲二寸五分
年号月日
西陣織物業組合ノ証 印
第六条 職工改名転居廃業スルトキハ其都度申出改名転居ハ証標ノ書換ヲ乞ヒ廃業ハ証標ヲ返戻スヘシ
第七条 組合員ハ証標ヲ所持セサル職工ヲ雇入ルヽヿヲ許サス
第八条 組合員及職工ノ増減ハ一年毎ニ組内一般へ報告スヘシ
第七章 経費収支方法
第一条 一ヶ年経費ノ収支予算額及賦課額ハ定期組合会ニ於テ議定スヘシ組合ヨリ支弁スヘキ費目ハ凡左ノ如シ
一 役員慰労金
二 理事書記小使雇給
三 事務取扱費
四 証紙発行費
五 会議費
六 商工会議所費
七 雑費
第二条 当組合ニ係ル経費ハ組合員ニ於テ負担シ地方営業税等級ニ依リ公平ノ法ヲ定メ賦課スルモノトス
第三条 経費賦課金ハ四期ニ分チ毎三月分ヲ一月四月七月十月ニ前徴スヘシ
但開業者ハ其期節分ヨリ経費ヲ徴収シ廃業者ハ其期節分迄ノ経費ヲ徴収スヘシ又経費徴集額ニ残余アル片ハ翌年度へ繰リ込不足ヲ生スルトキハ役員会ニ於テ其処置法ヲ定ム可シ
第四条 経費ハ其年四月一日ヨリ翌年三月三十一日迄ヲ一周年度トシ半季毎ニ精算書ヲ作リ組内一般へ報告スヘシ
第八章 違約者処分法
第一条 総テ本規約ニ違反スル者アリト認ムルトキハ其事状ヲ組長へ密告スヘシ組長ニ於テハ篤ト其実否ヲ探査シ相違ナキニ於テハ役員会ニ諮リ下条ニ拠リ処分スルモノトス
但過誤ニ拠リ本規約ニ違反シ其他違反ノ情状宥恕スヘキモノト認ムルトキハ懇篤説諭ヲ加へ向来ヲ戒ムヘシ
第二条 第三章第三条ノ規約ニ違背シ取引上ニ妨害セシモノハ為メニ生シタル損害ノ金高ニ相当スル違約金ヲ差出サシムヘシ
第三条 第三章第五条ノ規約ニ違背セシモノハ金参拾円以下ノ違約金ヲ差出サシムヘシ
第四条 第六章第七条ノ規約ニ違背シタル者ハ若干ノ違約金ヲ差出サシムヘシ
第五条 経費ノ出金ヲ肯ハサルモノハ郵便先払税ヲ以テ督促スヘシ尚出金セサルトキハ組合会ニ諮リ処分スヘシ
第六条 第五章第十一条第一項ニ違背スル者ハ違約金トシテ金壱円ヲ差出サシム
第七条 役員ニシテ規約ニ違犯シ其他不当ノ行為アルトキハ組合会ニ於テ之レヲ処分ス
第八条 第五章第十一条第一項ヲ除クノ外議員本規約ニ違反スルトキハ通常組合員ノ違反者ト同シク処分ス
第九条 違約者ノ処分方ヲナシタルキハ其事由ヲ速ニ本庁へ申報シ及組内一般へ報告シ都合ニ依リ新聞紙ニ広告スルヿモアルヘシ
但違約者ヨリ差出サシメタル金員ハ組合ノ共有トシテ組合会ニ謀リ之ヲ処置スヘシ
第十条 前各条ノ違約処分ニ応セサル者及第六章第五条ニ違反スル者ハ其筋へ申告シテ処分ヲ受クヘシ
第九章 雑則
第一条 当組合ノ一ヶ年事蹟組合員ノ増減ハ毎年一月中本府庁へ申報シ費用決算ハ毎年四月之レヲ申報ス可シ
第二条 組合役員ノ住所姓名及印鑑類ハ本府庁所管区役所及組内一般へ報告スヘシ其変換アルトキモ又同シ
第三条 此規約ヲ改正増減セントスルトキハ組合会ニテ決議シ区長ヲ経由シ本府庁ノ認可ヲ受クルモノトス
但内規約細則等ヲ定ムルトキハ本府庁へ届ケ出ツ可シ
附則
一 組長ハ組合ノ状況ヲ時々商工会議所へ報告シ商工会議所ヨリ組合ニ要報アルトキハ之レヲ一般へ告知スヘシ
二 組合員ハ互ニ信義誠実ヲ旨トシ常ニ親シク交際シ其情誼ヲ尽スヘシ
西陣織物業組合組長、副組長、取締 明治十八年四月決議の役員名簿には、
上京区第十六組飛弾殿町 組長 大木長七郎
同 第六組烏丸町 副組長 加藤庄次郎
とあつて同年十月改正組合規約認可迄は、此儘で置いたものと思われる。同じく改正規約は取締三名を置いて居るも記録不明。
同年十月大木組長が辞任して、山田泰蔵が組長に選任せられた。此時の取締三名も不明である。
明治二十年三月右山田組長が辞職し、後任は佐々木清七が選任せられ、此時の役員は全員記録に残されている。
上京区第四組東西町 組長 佐々木清七
同区 第六組烏丸町 副組長 松木安次郎
同区 第十六組飛弾殿町 取締 大木長七郎
同区 第四組大北小路東町 取締 北川利八
同区 第六組西今出川町 取締 川越藤助
同区 第四組古美濃部町 常議員 山田泰蔵
同区 第四組紋屋町 常議員 鳥居喜兵衛
同区 第七組東上善寺町 常議員 人見勘助
同区 第七組北小路仲之町 常議員 吉田善助
同区 第七組西北小路町 常議員 亀山利兵衛
同区 第七組笹屋町三丁目 常議員 家嶋治助
同区 第七組笹屋町二丁目 常議員 林源助
右役員達は此組合の最終迄勤めたものである。其内常議員は、規約中には存在せない役名であるが、当時の西陣業界に於ける、取締級の人物のみであるから、最高顧問として役員同列枢機に参劃せしめたものであろう。故に恐らくは、山田組長時代の副組長、及取締は此等の人の内から選任せられてあつたと見て、間違いない。
同組合各部及部長 明治十八年四月此組合規約開申申請当時のものは、旧社名を、組と改称し、紋織組、生紋組等と称して、其長は各組行事と唱えた。同年八月規約改正認可後は、八部となつて、部長、副部長、各一名を置き、若干数の幹事を置いた。之れは部議員に相当した。
組行事が部長、副部長に改称せられても、顔振れから見て変更し、或は改選する必要は無かつたと思われる。筆順に其儘部長、副部長に名称更えをして事足つたであろう。尤も二年後の半数改選に付ては記録が無い。
西陣織物業組合各組行事
上京区第四組大猪熊町 紋織組 久江長兵衛
同 同 伊佐町 同 加藤安兵衛
同 第二組下清蔵口町 生紋組 大石政助
同 同 長乗西町 同 天野伝蔵
同 第八組元妙蓮寺町 羽二重組 谷川庄八
同 第三組戌亥町 同 時岡宗兵衛
同 第四組幸在町 繻子組 安本宗七
同 第四組大猪熊町 同 野本治兵衛
同 第七組笹屋町一丁目 縮緬組 人見勘助
同 第八組桝屋町 同 橋井幸七
同 第一組西若宮北半町 博多社 鈴岡又兵衛
同 第十九組吉野町 同 田中三郎兵衛
同 第三組姥ヶ榎町 天鵞絨社 神供熊太郎
同 第八組五辻町 同 村山藤兵衛
同 第六組笹屋町五丁目 木綿社 佐々木甚兵衛
同 同 同 同 川端太兵衛
各部には、数町毎に分担を定め世話役を置いた。此世話役には人望家が多かつたが氏名を省略する。新規開業、廃業、転居、名前換其他営業上に関する一切の諸願伺届には、総て受持世話役の奥印を要する慣習であつた。
同組合組合会代議員と議長の越権 組合会代議員は、各部の戸数に応じて三名乃至七名を其部から選出せしめた。組合議会制度の嚆矢でもあり、組合員及其部を代表する者であるから、各部共識見信望のある人を選出して居るので次に記述する。
此頃は憲政実施、国会開設の機運が国内に横溢して、議会主義思想が澎湃としたので、西陣にも段々其傾向が現われて来た際であつたから、組合会の権威を誇る者が生じ、其上組合規約に、組合会の決議事項は之を要録し、組長議長連署し区長を経て京都府に上申する旨を定めた。之れは明かに組長の権限を制約し、却而議長の権限を強めた結果を生じた。其為議長が思上つて、温厚な旦那役員を、尻に敷き、専横に及び、例えば取引改善を目的とした後節に述べる市場開設の如き事業でも、行り口が組合の綱紀を紊し、組長の権限を無視して、専断で行い、計画が放漫粗雑であつた為、失敗に終り組合に損害を被らしめるに至つた。
西陣織物業組合会議員(初代)
議長 植田利七、副議長 橋本伝兵衛
紋織組議員
永尾徳兵衛、谷新七、武本清次郎、桜井米次郎、山田勘右衛門、原田伊助、宅間芳之助、長谷川杢次郎
生紋組議員
中上吉兵衛、小林伊之助
羽二重組議員
谷川柳助、淵田和助
繻子組議員
山崎亦兵衛、山本儀三郎、荒木菊三郎
縮緬組議員
松木安次郎、黒田彦次郎、川越藤助、林源助
博多組議員
細井勘兵衛、中井与助
天鵞絨組議員
家嶋治助、湯浅文助
木綿組議員
駒井清兵衛、高山伊兵衛、服部勘兵衛、沢村由三郎、小森利右衛門、谷田孝次郎、小川久吉、湯浅元治郎、菱田嘉兵衛
右議員は明治十八年四月選挙のものであるから、各部が組名となつている。議長植田利七は博多組議員、副議長、橋本伝兵衛は紋織組議員であつた。
























