工芸の第一の魅力は何?と問われれば、まずは多品種少量生産であることが挙げられると思います。多品種少量生産というとなんだかよくわかりませんが、簡単に言えばいろんな種類があって、細かいこだわりに応えられることだと理解してくれればよいです。そして、細かいこだわりこそセンスの見せ所です。

僕が工芸の好きなところの第一はここです。身の回りのものにはこだわった方が良いのです。これはいいものはQoLが上がるから高いものを買えという話ではありません。何を買うかは人生の豊かさに直結するのです。個性化の現代、「伝統工芸品を買って使う」ことは、とりもなおさず、「温故知新」「不易流行」あたりの価値観を表現することにつながります。

「買って使う」くらいがちょうどいいバランス感覚であるといえば、一部の方には魅力が伝わるでしょうか?アピールとは口に出したら効果が半減するものです。センスのいいものを買って使えば、何も言わずともセンスのいい人には伝わるし、センスのいい人にだけ伝われば、センスのよさがモノを言う社会で生きるには十分です。
ではセンスのいいものとは何でしょうか?簡単に言えば、センスの良さとは「自分の置かれている立場を表し」「ストーリーの中に組み込めるもの」とでもなると思います。
いくら高いものでも、分不相応なものを買ったところで豚に真珠です。マタイによる福音書に曰く、「生命は糧にまさり、體は衣に勝るならずや」。結局のところ、何を食べようと、何を着ようと、命そのものの方が食べ物より価値があり、着物より体の方が価値があるのです。卑近な例でいえば、容姿に優れた人間ならユニクロでもGUでもサマになることがそれに当てはまるでしょう。このことは、すでに2000年前にマタイが言及しています。

センスのいいものとは、言い換えると、「自分のこれまでとこれからを代表させるもの」と言ってもいいかもしれません。ということを考えると、モノの入手経路や入手するまでの経緯、使い方等、そのものに関わる全てがセンスを表し始めるのです。例えば同じコップでも、近所の雑貨屋で適当に買ったものと、一人暮らし開始祝いで親から買ってもらったコップでは主観的な価値が違います。そしてこの説明をすれば、心ある人なら、その人にとって後者のコップは価値があるのだと理解してくれるでしょう。このように、簿価以上の価値を生むストーリーをくっつけるのがセンスの正体です。

ということを考えると、センスのよいものに囲まれようと思ったら、まず自分自身がどのような人間で、これまでどう生きてきて、これからどう生きていきたいのか。これを考える必要があります。
とはいえこんな話を始めると一生話が終わりませんし、話が壮大になりすぎますので、この辺でやめておくことにします。工芸品の世界は広くて深く、おすすめしようと思っても全く容易ではありませんが、小物もけっこう作っている龍村美術織物のオンラインショップでも紹介しておく。龍村は西陣の名門の一つで、西陣機業に対する貢献も大きく、さらに祇園祭の懸装品を作っているところでもある。

小物なら西陣織会館も、いろいろ集まっていて良いです。西陣織会館で買ったといえばストーリー性もあるし、センスのいい選択であることは間違いありません。龍村以外の名門の商品も置いてあります。
西陣織会館はオンラインショップがありますが、残念ながら品ぞろえがいまいちです。対面も大概だと僕は思いますが、オンラインよりは幾分ましです。

伝統工芸の世界は広くて深いです。伝統工芸はネットで適当に調べるだけでは良さがわからないと思います。話をしたくなったら、ぜひ私にご連絡ください。→Contact



コメントを残す