京都は学生の街と言われます。「退屈をかくも素直に愛しゐし日々は還らず さよなら京都」との有名な句はそれについて読まれたものであり、京都を離れる学生の郷愁を表している、とされます。(ちょっと調べた感じ、このブログが端的に表現されていてよかったです)

学生と社会人について、京都でよく言われるとされ、実際に僕も言われたのは「京都では学生さん、社会人と呼び分けんねん。学生は『学生さん』でお客さんやけど、『社会人』は違って、『さん』がつかない」この文句である。
これは京都の持つ多面性をよく表していると思います。他の都市と同様、京都も広く大きい。学生程度が把握しきれるほど浅い町ではないことはご承知置き頂きたいと思います。だから「京都は学生の街」との一面的な理解は捨てて、大人になって、出世してからまた来てもらえば、また違った側面をご覧いただけるでしょう。
一都市として見る京都の姿は、さすがと息をのまざるを得ません。大人の京都の面白さについては、僕がブログで紹介しているような歴史を始めとして、美術・工芸・歴史・宗教・文学・建築・商業・工業等々と多岐にわたり、語りつくせるものでもないし、そもそも僕では力不足すぎることを承知の上で、あえて簡単に説明してみます。
1.歴史
これは言うまでもありません。が、深入りするのに一番敷居が高いのがこれかもしれません。京都は1200年の歴史があるだけあって、歩くだけで楽しめる街でもあります。知識に対するリターンが一番大きくなる街といってもいいかもしれません。深い知識を入れようと思ったら、相応に骨が折れますが。
基礎知識として入れておくといいのは、平安京の町割りです。これと、これの周辺知識を多少入れておくだけで、他の吸収率がずいぶん違うと思います。京都の歴史本は無限にありますから、あとは好きなものを読んで、好きなところを歩けばいいでしょう。これで京都を楽しみ放題です。

2.食事
第二は食事です。京都は出汁が美味しいです。出汁以外も結構おいしいが(肉の調理とか)、結局のところ、京料理のおいしさの8割は出汁のおいしさです。

京料理の本領は懐石といわれますし、もちろん値が張るだけあっておいしいです。懐石でおすすめの店を挙げるとすると、上七軒のおかもと紅梅庵とか、富小路六角下がるの要庵西富家、西陣郵便局の裏の西陣魚新とかだろうか?特に要庵西富家は本当においしいと思います。懐石の相場は、安くて1万円程度、高くて8万とかだと思うが、その中で一人4万円程度なのは安いといえば安いと思います。隣のやま岸より安いですし。

なお、懐石は本当にピンキリです。例えば5,000円~6,000円くらいの懐石(?)は外れが多いので注意が必要です。あと海鮮は正直東京の方がおいしいです。
3.工芸
京都は工芸の都です。元禄時代に頂点を迎えた京都の工芸は、今でも日本の諸技芸の本場であって、いくらでもこだわりたい諸兄にはピッタリです。これは過去にも引用したけれども、
京都は日本における諸技芸・製造・貿易の本場であって、京都の製品は全国に著名にして、京都にて作れりしと云へば、人はさあらぬものよりは優越なりと認るなり。(ケンぺル「日本誌」)
なのです。

きものが好きな人なら室町・西陣を訪問したいと思う人もいると思いますが、きものを深掘りするのは結構難しいから、僕に連絡するか、他に探すかするといいと思う。
ともかくどこかの小売店・問屋・メーカーの上客になるか、その道に就職するかのどちらかしかありません。これは呉服に限った話ではありませんが。
焼き物ならいわゆる京焼ですが、焼物なら五条坂周辺の店がいいでしょう。小売店なら竹虎堂、朝日堂あたりがおすすめかもしれません。陶磁器会館もいいです。それと、夏くらいにはメーカーが販売会をしていますから、このタイミングで買うのもいいでしょう。前は私もたまに買いに行っていました。
(懇意にしている小売店の人にメーカーの販売会の話をしたら微妙な顔をされましたから、そういうことなのでしょう。メーカーと流通の関係は何処の業界も変わりませんね)

とにかくこの街は、一定程度までは来るもの拒まず・去る者追わずですが、仕事をするにあたっては、キッチリ腰を据えて取り組まなければなりません。舐めた仕事をしては駄目です。ツイッターでは「モラトリアムの具現化」などと面白い評価をされていますが、学生に限った話なのは言うまでもありません。
おまけ
さて、本ブログの主要な題材は西陣・西陣織、あるいは室町も含めた染織産業の歴史である。そして西陣の歴史で一番面白いのは、明治から昭和までの組合史だと思います。せっかくなので今回は、かつて西陣にあった広報誌「西陣織たより」第一号(昭和26年発行)に載っていた文章を掲載しておく。ここに出てくる「西陣織物同業会」とは現在の組合の直接の前身である。

西陣と金融
第一銀行西陣支店 支店長 加藤光一
わが西陣に機業界を代表し業者の總意を結集し、業界の進步發展の爲めに必要な事業を行う機關が存在しなかつたと云うことは、洵に不思議なことでありましたが、此の度西陣織物同業會が設立の準備を完了し、菊花薫る仲秋の佳日に新發足せられましたことは、真に御同慶に堪えないところであります。多くの困難を排除して此處まで事を運ばれた理事者各位の勇氣と御苦心に對し、またさしあたり經濟的な利益の期待出来ない同業會に卒先參加せられた會員各位の熱意に對し、深甚の敬意を表する次第であります。
西陣は千年の歴史を有する我国最古の機業地であり、傳統の精巧な技術を有し、製品は帶地、着尺、金欄、ビロー ド、廣巾織物等多種多様に亙ること、生糸は元より人絹、 化纖、毛糸、麻糸、綿糸等あらゆる繊維が原料として使用せられていること、生產行程が極度に分業化せられ、此の分化された業種毎に多数の業者、多様の業態の存在すること等内地の機業地に比較し得るものがありません。
由來產業と金融は車の兩輪の如きものでありまして、上記のような機業地としての特色は自ら金融の面に於ても幾多の特異な様相を呈することとなるわけであります。西陣の金融に関与している機関には、銀行、信用金庫、商工中金、無尽会社等本来の金融機関の他に生糸商、買継商(所謂上仲買)、室町筋の問屋(所謂下仲買)或は府市の直接又屋、糶市(せりいち)等迄時と場合によっては相当の役割を果しております。
銀行について簡單に申しますと、西陣の中心、同業会の事務所のあります今出川大宮界隈に軒をつらねる銀行が八行九店舗、之に一信用金庫が加わって十店舗で土曜會と云う連絡機關をつくつて居ります。此の土曜会メンバーの銀行の預金は二二一二億、貸金は一七一八億位と推定せられるのでありまして貸出の約八割は機業とその関連産業に対するものであります。貸出よりも預金の方が多いようでありますが、西陣の機業に闘する限りでは貸出は預金を可なり上廻り所謂オーバー・ローンの形になつていることは明かであります。右の土曜會メンバーの銀行の他に廣く西陣地區には、銀行の店舗が一〇、信用金庫の店舗が四、無尽会社の営業所が数ヶ所ありまして之が直接間接に機業の金融にたづさわっているわけで、一機業地にかくの如く多種多数の金融機関の営業所を有しているところは何処にもありません。
よく局外の人は西陣は古い、あらゆる面でもつと新しくならなければいけないと無責任に言つてのけますが、西陣は千年の風雪に耐えて今日の形態にたどりついたものであり、今日の西陣は一見複雑怪奇で、舊套依然たるものがあるようにみえますが、また新興の機業地に見られない強靭な底力があって、今迄幾度か西陣の危機を叫ばれながら立派にそれを乗り切つて生き抜いて来、今日内地の機業地の中にあって尤も健全なものに数えられているのには、それ相当の理由がなければなりません。元より新しい時代の威覺をとり入れ、現状を改善して行く工夫努力を怠ってはなりませんが、それかと言つて傳統を忘れ一塁に革命的な改革を行うことは、角を矯めて牛を殺す愚に均しいのではないでしようか。西陣の機業と金融は車の兩輪の如くどちらが進みすぎても遅れすぎてもいけない。同じ速度で着實に前進することこそ西陣を健全に發展に向わせる原動力と信じるのであります。
(太字部分のみ新字に直した)


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