loader image

西陣織物同業会発足を祝して (昭和26年11月発行)

西陣織物同業会発足を祝して(京都市長 高山義三)

本日ここに着尺組合を除く他の西陣織物業者がうって一丸とする西陣織物同業会が結束せられましたことに対しまして私は心から喜びの言葉を述べる次第であります。私は余りこの織物のことは知らぬのであります。

もともと育ちが弁護士でありまして、ぼちぼちこれから勉強しようと思っているのでありますが、夕べ私は太秦のお祭りに行きました。そうして牛の出るのを待っていた間にお茶が出ましてそこでお茶を飲んでいた時に隣にいたおじいさんが盛んに京都の事を罵倒している、私はそれを横で知らん顔をしてそれとはなく聞いていたのでありますが、なかなかの辛辣な批判をしておったのですがその中にこういうことを言っていた。京都の金持ちは皆人を泣かして金持ちになっているのだ、中京の金持ちはみな織物屋を泣かしているのだというのです。彼等の財産はなんびきぶびきで作っているのだ。なんびきぶびきというのは皆さん一寸おわかりにならぬと思います。

実は私もよくわからなかった、併しよく聞いてみるとなんびきとは皆さんの製品に難を色々とつけてやっていく、ぶびきとは一応ついている値段を見てからどんどん安くたたいて何歩か引いて買う、つまり難くせをつけて何歩かたたいて引いて貰ってから買うというのです。私は織屋自体が団結しておれば決してこのようなことは起らないのではないかと思います、ばらばらになってつまらぬ事でお互が競争し始めるから其処にすきが出来る。そのすきに突きこまれるのであります。

私は労働者の場合でも同じことが言えるのではないかと思うのでありますが、労力を売ろうとすると資本家はこれをたたいて買おうとする。そうするとうまくいかない。それで組合を作って運営していくと正当な利益が相互に生まれうまく行く、其の意味に於きまして私は組合が出来るのが遅かったのではないかと思います。

大体まあ京都という所は、私もまあ京都人でありますが、どうもこの協同的な仕事をするのはむずかしい所ではないかと思います。甲が右向くと乙が左向く、会合を開いてみても其の時はだまっている。賛成なんだなと思っていると後から反対なんだと言い出す。なかなか一つの事を纏めてこれを行うということはむずかしい。併しそれにも拘らず西陣同業会が誕生し着尺組合と相提携して一つの西陣業界の力とな る組合が出来たということはまことに結構な喜ばしいことだと思います。

西陣には伝統がある。長年続いてまいりました輝しい伝統がある。併しこの伝統というものはプラスする時とマイナスする場合がある、つまり親しい人がこれをやって来たのだから我々はこれを失しなわないように伝統を守って行けば好いのだ。という場合には伝統は明きらかにマイナスしたものを与えている。現状維持、現状から一步も出ないということは明きらかにマイナスであります。

私はアメリカへ行きましてつくづく感じましたことは、これはもう帰国致しましてからしばしば皆さんに機会ある毎に申し上げているのですが、アメリカは午前十時の国である、 今アメリカの国は午前十時だということを言っております。アメリカは資本主義が行き詰ってもうこれ以上繁栄していけないのではないかという人がありますが、私はそうではないと思います。いやアメリカは依然として午前十時の国であるということを言って来たのですが。

(一方で)西陣には伝統がある、この伝統は一つのプラスになる。併し伝統によってこれを再検討することなく又反省して改善し常に一步一歩進んで行くという努力をしなければ、西陣業界は発展して行かぬと思います。アメリカでもたえずこれで好いのか改善すべきところはないかと創意工夫を怠ることなく歩ゆんで行っております。反省し改善して行くところに進歩あり。どうか伝統をいかすところに西陣の発展する途があるのではないかと思います。甚だ簡単ではございますが一言申し上げまして本日の祝辞と致します。

Visited 12 times, 1 visit(s) today

[nishijin_nav]

コメント

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です